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まえがき
本書は “ビートルズ英語読解ガイド”(2007年8月刊行)および “ビートルズ作品読解ガイド”(2008年1月刊行)の姉妹書である。
この二編を著した私の意図は、ビートルズ作品の歌詞について蔓延している誤解、誤訳、そして不正確な聴き取りを正すことであった。私が用いたアプローチは、彼らがレコーディングアーティストとして活躍した八年間に発表したオリジナルナンバー186曲と後に制作された2曲、計188曲の歌詞を発表順に読んで行く、という単純なもの。ただし、前編では初歩からの英文法解説を織り込み、後編では作品の背景説明を加えた。CDを聴きながら、もしくはCD付属の歌詞カードや市販されている詩集や楽譜などを参照しながら熟読した読者は、それまで難解だった、もしくは誤解していた歌詞の部分の多くを理解したはずである。また、自覚はしていないにせよ、一通りの基本英文法をざっと復習したのである。
しかし、歌詞の隅々まで読むとは言っても、数千に及ぶすべての文の一つ一つを解説する紙面はない。分析の対象は、どうしても、より難解な文だけになってしまった。ここで危惧するのは、十分な英語読解力を持たない読者にとっては、解説していない部分が曖昧なまま残るという可能性である。どうすればよいか? 既刊の英文法解説書で学習し、その知識を応用しながら英和辞典に当たることを勧める? 正論であろう。しかし、これで事が運ぶのならば、そもそも誤訳などの間違いは蔓延していないはずだ。
私が出した答は本書である。“ビートルズ英語文法ガイド” は、ビートルズが歌詞として作成した文章のすべてを分析し、形態、機能、意味についての規則を抽出し、体系的にまとめたものである。土台は、ビートルズが無意識であれ従った英文法であることはもちろんだが、現在完了継続用法や一部の否定語の使い方などにおいて、標準英文法に属さない点もある。
規則抽出の原となった文例は、用法ごとに複数を示すようにした。1813に上り、ほとんどすべての文法事項をカバーしている(ビートルズの歌詞に包含されていない項目は、付加疑問、未来完了、助動詞 dare、劣等比較、絶対最上級、関係代名詞 whose くらい)。加えて、私が作った文例が515。前述の穴を埋めるだけではなく、これと比較することによって、ビートルズの用法をより良く理解できると考えたからである。例えば、助動詞 would について、ビートルズの用法を11に分類したが、歌詞の中から22の文例を示した上で、私の作文を二つ加えた。さらに、参考として、別の用法の文例三つを披露している。
前二段落を読み、目次に目を通すと、本書は一般の英文法参考書と比べて遜色がなさそうという印象を受けるかもしれない。私はそのつもりで書いた。しかし、本書はビートルズの歌詞を正確に読み取るためのガイドであって、英検、TOEIC、その他の試験に合格するための手引書ではない。そのような目的のための副読本として扱っても構わないが、本書の記述の中にいかなる試験問題の模範解答と異なる部分があったとしても、私は関知しない。その他、本書から得た情報を使用した結果として何らかの損害が生ずることがあったとしても、私は責任を負いかねる。
本書がビートルズファン同朋の役に立てば、幸いである。異論を含め、意見などがあれば、お聞かせ願いたい。
2008年10月
秋山直樹
本書の利用法
<be動詞の現在形+going+to不定詞>のように、< >で括ってあるものは、構文などの基本的な構成を示す。文例においては、解説中の文法事項の主要語句を目立たせたい時は、これを太字にした。注目すべき語句はイタリック体(例えば good )で表示。文例に注釈を加える場合は、<it は形式目的語>のような体裁にした。文例の次の行に( )で括ってあるのは、文例の和訳である。
文例が著者の作文である場合は、和訳の後が空欄になっている。一方、ビートルズ作品の歌詞からの引用である場合は、続く〔 〕内の数字が作品番号を表している。例えば〔073〕は、248〜252ページに掲載の作品索引を参照すると、In My Life であることが判る。
241〜247ページには本文の索引も掲載してある。これを併用すれば、特定の作品中の特定の語の用法に関する情報を逆引きすることも、ある程度は可能であろう。